礼文島
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更新日:4 日前
2025年3月ごろ、いつもお世話になっているランドネ編集部の加藤さんから1通のメールが届いた。
— 2026年6月号で、高山植物にフォーカスを当てた特集号を出版する予定で、
高山植物を見に行く旅のルポを、12ページ一緒に作ってもらえないかな —
というご相談だった。高山植物と聞いて、真っ先に私を思い出してくれたこと。本当に、本当に、嬉しかった。もちろん、1つ返事で、ぜひご一緒したいとお願いをした。webが主流になりつつある時代。わざわざ雑誌を読み、今年の夏はどこの山へ、花を愛でに行こう。と思ってもらえるよう1年前に山行のスケジュールを立てた。行きたいところや、リストをランドネさんからいくつか候補を頂いた。火打山という案が第一候補とご相談をいただき、せっかくの高山植物特集。読者の皆さまが触れたことがない場所、紙媒体で見る情報の価値をしっかり伝えられる場所をご紹介したいと思い、私の憧れの場所でもあり、ずっと行ってみたいと思っていた「礼文島」に行きたいとだめもとでリクエストをしたら、快くお引き受けいただき、私たちは、3泊4日で礼文島へ出発する旅の計画を立てた。

高山植物に出会ってから、行ってみたいと思いを寄せていた夢の場所、礼文島。日本最北の離島で、約300種類の高山植物が咲く「花の浮島」と呼ばれている。海抜0mから高山植物が咲く島。北緯45度近くという高緯度に位置し、年間を通じて気温が低く、海からの風が強い。また、木が育ちにくいため、草原状の地形が維持され、霧も多い。日照時間が限られることで厳しい生育条件が生まれ、高山植物の生育に適した環境になり、礼文島では、さまざまな場所で高山植物がたくましく咲く。
ちなみに高山植物とは、名前の通り高い山に咲く花でもあるが、広義としては厳しい環境下で育つ花のことを指す。礼文島は、もちろん後者で、厳しい環境下で育つ高山植物たちに出会える。「利尻島・礼文島 山の花図鑑」という本を購入し、ページを捲っては夢の場所に想いを寄せた。どんな花に出会えるだろうか。両手に抱えきれないほどの花に出会えるのだろうか。ページを捲るたびどきどきしながら、花図鑑を握りしめ出発をした。礼文島までは、飛行機で稚内空港まで行き、稚内からバスでフェリーターミナルまでアクセス、稚内からフェリーに乗り、香深港・礼文島へ。たくさんの乗り物を乗り継ぎ、やっとの思いで辿り着いた。初日は移動日とし、翌日から花に会いに行く工程を組む。明日から始まる花の旅の作戦会議をしながら、夜はホッケのちゃんちゃん焼きと乾杯。とってもおいしかった。
加藤さんから、今年リニューアルをした礼文島にある「咲涼」にあるお部屋がとても可愛いとご提案してくださり、とっても素敵な1室に宿泊をさせていただいた。お部屋には、miltataさんが手がけた絵をイラストにしたタペストリーが飾られていて、この柄のバンダナを早速お土産に購入した。
|礼文観光ホテル 『 咲涼 』

お部屋には、至る所に高山植物が散りばめられていた。明日からの高山植物に会いに行く旅に、期待が高まる。少し緊張してきた。でも、楽しみの方が勝った。どんな姿で咲いているのだろう。


翌朝、花図鑑を閉じて自分の目で確かめに、桃岩展望台へ向かった。周回コースなどのコースもあり、しっかりと整備もされている。午後は、ゴロタ岬にアクセスをする予定だったので、桃岩展望台~元地灯台までの約2.5kmの自然歩道を歩くことにした。花の季節はすでに巡り、今年は高山植物の咲く季節が2週ほど早いとのこと。夏の花は終盤だったが、それでもたくさんの高山植物に出会うことができた。なだらかな尾根を巡る歩道は原生花園が広がり、絶景のトレッキングルートだった。


標高は300m以下だが、高山植物のすみかだけあり、強風や濃霧も時折あり、さすが礼文島。キタノコギリソウ、ツリガネニンジンが見頃だ。ツリガネニンジンといえば、六花亭の包装紙に描かれているお花のひとつ。全国的に見られるツリガネニンジンも北海道で見るとなぜか北海道らしさが増して、出会えたことに嬉しくなった。



午後は、北上をしながらゴロタ岬へ向かった。礼文島の北西部には4つ(澄海岬・稲穂岬・ゴロタ岬・スコトン岬)のうつくしい岬があり、最北限はスコトン岬。4つの岬を歩く縦走路12.8kmのコースもある。私たちはゴロタ岬へ行った後、車で最北端のスコトン岬へ向かうことにした。ゴロタ岬は登山口から歩いて30分ほどで、海を背景に高山植物が一面に咲き、とても美しい景観が広がっていた。

海と高山植物のセットは、ここ礼文島ならではの景色。一瞬で心を奪われた。「礼文島に来たんだ」と夢の場所に来れた幸せを噛み締めた。



ハイキングを終え、礼文島で行きたい場所リスト、礼文町高山植物園へ向かった。園内では礼文島の高山植物約50種類、約2万本が育てられ、高山植物を中心に展示・保護をしている植物園で、礼文島固有種レブンアツモリソウの栽培展示もしている。レブンアツモリソウの時期が終わっても、運がよければここ高山植物園で出会うことができる。私は運がよく、昨日咲いたという鉢植えされたレブンアツモリソウを見ることができた。お土産にピンバッチを購入。礼文島に自生する植物をモチーフにした「礼文島リボンプロジェクト」で、生物多様性保護の活動を支援しており、収益は高山植物の保護活動に充てられていて、全種類とてもかわいい。植物園で採取された花の種を持ち帰ることができ、吟味して種を選んだ。発芽まで約3年、発芽率は50%とのこと。いつか自分の庭を作る夢があり、その時に環境を整え、植えてみたいと思う。
|高山植物園


レブンアツモリソウは、北海道の離島である礼文島に自生する、とても希少なラン科の高山植物です。
レブンアツモリソウ(学名:Cypripedium macranthos var. rebunense)といい、日本固有の変種として知られています。
白〜クリーム色の大きな袋状の花を咲かせる
花の大きさは約5〜8cmほど
草丈:20〜40cm程度
開花時期:5月下旬〜6月中旬
名前の「アツモリソウ」は、袋状の花を平安時代の武将・平敦盛の背負った母衣(ほろ)に見立てたことに由来します。「自然に咲いているレブンアツモリソウ」を見ることができるのは、現在のところ世界で礼文島だけとのこと。高山植物園では、人工増殖されたレブンアツモリソウが展示・栽培されており、開花した姿を観賞ができる。


園内の高山植物には、花の名前が1つずつ丁寧に書かれていて、山で出会った高山植物と答え合わせをしているかのようだった。

宿に戻ると、宿泊場所 咲涼でたまたま開催をしていた礼文島に住むカメラマン クリス・ブラウン氏の特別上映会が行われていた。15年以上にわたり撮り続けた映像と写真。日本とは思えない絶景の数々、トレッキングコース選びのヒントがたくさん映し出されていた。クリスさんに翌日、礼文岳へ行くと話すと高山植物は今ほとんど咲いておらず、とても暑いから、礼文滝へ行くのがいいとおすすめをしてくれた。最終日は、礼文滝へアクセスすることにした。

昨日のルートとは異なる世界が広がり、海の姿が見られない。スタートすると両脇には、ヨツバヒヨドリの群生がお出迎えしてくれた。笹原と森林の中を通り抜け、一気に視界が広がる。レブンウスユキソウが咲き誇るつづら折りの坂道を下り、谷へ。


ゴールは、静かな海岸と礼文滝だ。礼文滝は、海岸付近に向けて一気に水が流れ落ち、その横の海岸沿いには高山植物が咲いていた。本州では見たことのない品種の高山植物の姿。「会いに来れてよかった」と改めて心から思った瞬間だった。図鑑を閉じ、自分の目で確かめる。




2日間で出会った高山植物の記憶を忘れたくないと思い、出会った日に思い出しながらメモをした。まだまだ私は高山植物のことも、生態系のことも、どんな生き方をしているのかなど、わからないことだらけだけど、高山植物がどんな人柄なのか、ということは知っている。
強くて、逞しくて、繊細で、人と比べず、競争心がない。自分のことを、自分で守る努力をし、たくさんの工夫を凝らしながら、しっかり自立をして生きていること。高山植物とはこういう人。だから好きなんだと思う。私は、高山植物のことが。


背丈が小さい高山植物たち。しゃがんで、足元をのぞきこみ、立ち止まって出会える儚い存在。図鑑で見るよりも、実際に自分の目で確かめることで、葉の大きさ、形、色がよくわかる。なんでも自分の目で見て確かめ、感じること。それが旅であり、花の旅は、私の人生において大切なことであると礼文島に来て改めて感じた。今日会えた花も、明日にはもうこの場所にいないかもしれない。その一瞬の命に出会うことは、奇跡なのだと思う。セイコーマートの前に高山植物が咲いていた。厳しい環境下に咲く高山植物たち。ここ、礼文島で生きることの厳しさも感じた。生きる術を自ら学び、争うことなく静かに咲き誇る高山植物。毎年会いに行きたい植物。それは、紛れもなく高山植物だ。これからも、儚くてたくましいこの姿を追い続けていく。この夏は、どこの山に会いに行こうか。
『 ランドネ 』
自然・旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみを探す人に向けた専門誌