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Hakusanfuuro / baselyer socks

更新日:5月27日


足のムレ・冷えを防ぐ足袋靴下が編み上がりました。冬山のとき、厚手靴下の下に履く“ベースレイヤーソックス”と言います。インナーだけではなく真冬以外は普段履きとして1枚で使える靴下。表側には保温性や消臭効果があるウール素材を、裏側にはキュプラという吸放湿性に優れた素材を組み合わせ、足のムレを軽減してくれる靴の中が快適になる1足。薄くてもすぐに穴があかない強度のある靴下が誕生しました。


<使い方について>


for hiker…

・冬山、雪のシーズン足先が冷えてしまう方へ

・厚手のウールソックスを履くと靴の中が汗でムレてしまう方へ

・秋冬の低山で高山植物図鑑だと少し寒いという方へ

(高山植物図鑑との重ね履きも相性◎)


Not for hiker…

・夏〜秋:1枚履きとして快適に使えます

・冬:寒い季節にいつもの靴下のインナーソックスとしてお使い頂けます


<靴下の素材について>

キュプラ(ベンベルグ)という素材はご存知ですか?高級スーツの裏地などによく使われるツルツルとした素材。原料はコットンの種の周りにあるコットンリンターという綿毛が原料となっている再生繊維です。昔から大好きな素材です。キュプラを表糸に使用した一輪のばらというお気に入りの品番があった。そのキュプラを、今回は裏側(スーツの裏地のよう)に使用しました。肌触りも最高な故、素材特有の特徴が素晴らしいのです。一つずつ、丁寧に説明してゆきますね。


まず、表糸にはmerino wool 100%。AUS /NZ のブレンドされたAUTHENTICOという糸を使用。(靴下は、表糸+裏糸+ゴム糸でほとんどの製品が編まれますよ、覚えてね)バルキー性に優れたニュージーランドメリノと、膨らみのある豪州メリノウールをブレンドすることにより白度に優れ、クリンプ(縮れ)が強いため、綺麗な光沢と膨らみが特徴なAUTHENTICO。

裏糸(肌に当たる面)にはキュプラを使用しました。コットンリンターを原料とする再生繊維で、キュプラはスーツの裏地などに主に使われベンベルグ®と呼ばれることもありますが、ベンベルグ®は、旭化成が持つ商標になります。まさに、表面は上質なウール、裏面はキュプラを使用した高級スーツのような仕立てで編立した1足。


※コットンリンター・・・

コットンの種の周りのうぶ毛のこと

通常綿糸としては使われなかった部分を精製・溶解して糸にしています


 

表糸:AUTHENTICO(ウール)の特徴

・毛玉ができにくい

・汗をよく吸い、すぐに乾く

・消臭効果がある

・摩擦に強く、綺麗が長持ちする


■裏糸:キュプラの特徴

・吸放湿性に優れている

・「呼吸するような」繊維

・湿気を吸って外に放出するのでムレにくい

・繊維内の水分を介し、静電気を空気中へ逃すため、

 制電性に優れている


<キュプラの作用について>


・足の裏が湿った状態ではなくサラッとしてくれます

・吸放湿性には優れておりゆっくりゆっくり肌と調湿をし吸収した湿気をゆっくり熱を逃さずに放散してくれます

・水分が多い繊維の為、靴下を脱いだ後に靴下が多少湿っている事がございます

・ポリエステルほどの吸水・速乾性はございませんが湿気を吸い取り、

 拡散放散させる作用はポリエステル素材よりも上回る特性がございます


※吸放湿性・・・

生地がどれだけ湿気を吸収しやすいか

また吸収した湿気をどれだけ放散しやすいかということ


ベンベルグ、素晴らしい素材なんです。さらにベンベルグは世界で唯一 日本の旭化成だけが生産している素材なのです。ベンベルグが誕生したのは化学繊維が開発されたばかりの19世紀後半のドイツで、旭化成は、ベンベルグ社が開発したその技術を導入し、研究を経て日本で初めて生産に成功。研究と技術の革新により、現在は、世界で唯一、日本の旭化成だけしか生産していない素材です。素晴らしい素材、これからも大切にしたい素材の一つです。


冬・雪山となると、登山の難易度も上級になって、ギアも増え、レベルが格段にアップ。なんちゃって、のような安易に物を作れない。オールシーズン登山道具は簡単にものを作ってはいけないと思っていますが、冬山に使用する製品となると、より緊張感があります。

いつもは自分の足を信じて、何度もモニターをして、山に入ってテストを行いますが、今回だけは自分の感覚、足だけでは無防備に製品化することが出来ず、素材を2種類に選定して生地検査の比較試験を行った。数字という苦手なものが、いつにも増して頼り甲斐のあるものとなった。数学が好きなひとの気持ち、答えがあるというものは気持ちがよい。数字には嘘がない、今回の学び。


試験素材は、以下の2種類。


【1】表糸:メリノウール+裏糸:異形断面のポリステル100%

【2】表糸:メリノウール+裏糸:ベンベルグ100%

(※以下、【1】【2】と表記させていただく)


試験内容は、


①摩擦試験

 …摩耗で孔があき、機械が停止したときの回数(通常の靴下は500回)


②吸放湿性試験

 …生地がどれだけ湿気を吸収しやすいか、また吸収した湿気をどれだけ放散しやすいかを評価するために行う試験


③拡散性水分率

 …生地の速乾性のみを評価する試験です。一般的にJISの吸水性試験の結果と組み合わせて、吸水速乾性の評価を行う場合が多いです

 一般的に、滴下法は織物が 60 秒以下で編物が 10 秒以下、バイレック法は 80 mm以上が良いとされることが多く

 また、拡散性残留水分率は 60分後に 30%以下であることが目安とされています


④吸水性試験

 …吸水速乾性(または吸汗速乾性)とは、スポーツ等でかいた汗を素早く吸収し、素早く乾燥させる性能をいいます


試験結果は以下の内容となった


①摩擦試験の結果

 【1】2531回

 【2】3004回


強度については、生地に摩擦をかけ、何回で破れるかという摩擦強度試験内容

通常仕様の靴下と比べ6倍の強度結果が出ております(3004回の摩擦で穴があいたという試験データ)

薄手ですが、しっかり強度がありました


②吸放湿試験の結果

(25℃・湿度80RHの環境で試験データ)

 【1】777μg

 【2】1298μg


吸放湿試験とは、湿気を素早く吸い取り、放湿(外に逃がす)というデータ

数字が大きいほどに放湿するデータが良いのでベンベルグの方が上回る結果に


③拡散性水分率の結果

(生地に水分が残っていない状態になるのが何分後かというデータ)

 【1】47.4分

 【2】41.3分


④吸水性試験の結果

(生地に水滴を垂らし、生地が水を吸い上げサラッとする状態まで何秒か)

 【1】2秒

 【2】3秒


拡散性水分率、吸水性ともに吸水速乾性の良いポリエステルとの比較だと両者ともに良いデータだった。通常の靴下だと、生地に水分が30%残っている状態が60分後なら良いとされ、今回の生地は2種類とも40分台で0%という優秀な結果。比較を行いどちらも捉え方としては良い結果のデータが取れて、自信に繋がった。最終ジャッチはこの結果を踏まえ、あとは履き心地、私の足裏の感覚のみ。こうなるとベンベルグの1択だった。

試験を出す前からベンベルグで製品化したいと思っていました。でも、登山道具でベンベルグを使用している製品がほとんどなく、登山時には見合ってないのかな?と不安だった。けど、この試験結果を見たら優秀だったし、テストの足裏が蒸れる感覚もなかった。何より、履き心地が素晴らしかった。「やっぱりベンベルグ、最高だよね。」という私の好きな素材を信じて出来上がったものだ。


あとは、見えても見えなくても自分だけが知るお守りの刺繍。山に咲く高山植物のハクサンフウロの刺繍を入れた。この刺繍の糸も、肌に当たって痛くならないように柔らかく、手縫いのようなざっくり感を出したく、刺繍の糸を探したら、なんとこの糸もベンベルグ!

ベンベルグ、最高!



 
 
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